雑色の手をふところに賀茂祭り
風鈴を人が鳴らしてゐたる音
日覆を下ろしとどむる道の上
稚子すでに上りし鉾の日傘
人形に倣ふといへど鉾の稚子
うでぬきの紅濃なりける鉾の稚子
日焼たる須磨浦町のをとめたち
新樹よりこぼるる藤をいぶかしみ
忍冬の花折りもちてほの暗し
浴衣著て女人高野の塔と狎れぬ
七月の菩提樹の実をかく拾ふ
斑猫のけしき変りて蟻を追ふ
斑猫の蟻打てる手の見ゆるなり
てのひらにのせてくださる柏餅
舟先に眞菰へなへな伏し沈む
ハンカチや日の芝に落ちて半ばは木影
木漏れ日のあればとどまる蜥蜴かな
空蝉を子が拾ふ手の女なる
香水やまぬがれがたく老けたまひ
涼しやとおもひ涼しとおもひけり
躓ける格好のまま蝉の殻
風鈴の音には容喙せぬつもり