和歌と俳句

後藤夜半

噴水の塵を浮むるほとりかな

蛍火の水に在ともいひつべし

蛍籠今宵もともりそむるなり

蛍籠ともりそむれば見ゆるなり

凌霄のかづらをかむり咲きにけり

の上に水現れて落ちにけり

瀧水のおくるる如く落つるあり

ことごとく瀧に向へる床几かな

見おぼえのある顔をして袋角

ひらきたる日傘の陰に這入りけり

遊船のふなばたにある閾かな

ほととぎす盛りの寺の沙彌ふたり

大いなる蟻地獄あり小さなるも

早乙女の一枚の田に下そろふ

海道に籬し居りて業平忌

蚊帳を吊りしままに現れず

夏帯に彼の鵜篝を描きたり

みちをしへ翔ちし糺の祭かな

御車はうしろさがりや賀茂祭

冠に葵桂のぶらさがる

白丁の顔の小き賀茂祭

白丁に随ふ賀茂の牛童