崇徳院御製
さみだれに花たちばなのかをる夜は月澄む秋もさもあらばあれ
延久第三親王輔仁
さみだれに思ひこそやれいにしへの草の庵の夜はのさびしさ
藤原基俊
いとどしくしづの庵のいぶせきに卯の花くたしさみだれぞする
源俊頼朝臣
おぼつかないつか晴るべきわび人の思ふ心やさみだれの空
藤原顕仲朝臣
さみだれに浅沢沼の花かつみかつ見るまゝに隠れゆくかな
左京大夫藤原顕輔
さみだれに日数へぬれば刈り積みししづ屋の小菅朽ちやしぬらん
前参議藤原親隆
さみだれに水のみかさやまさるらし澪のしるしも見えずなりゆく
皇太后宮大夫俊成
さみだれは焚く藻のけぶりうちしめり潮たれまさる須磨の浦人
藤原清輔朝臣
時しもあれ水のみこもを刈りあげてほさで朽たしつさみだれの空
待賢門院安芸
さみだれは海人の藻塩木朽ちにけり浦べにけぶり絶えてほど経る
源行頼朝臣
さみだれに室の八島を見わたせばけぶりは浪の上よりぞ立つ
源仲正
さみだれは苫のしづくに袖ぬれてあな潮どけの浪のうき寝や
賀茂成保
さみだれの雲の絶え間に月さえて山ほととぎす空に鳴くなり
按察使源資賢
をちかへり濡るとも来鳴けほととぎす今いくかかはさみだれの空
中納言源師時
逢坂の山ほととぎすなのるなり関守る神や空に問ふらむ
律師慶遍
いにしへを恋ひつゝひとり越え来ればなきあふ山のほととぎすかな
源俊頼朝臣
などてかく思ひそめけむほととぎす雪のみ山の法の末かは
権中納言藤原俊忠
五月やみ二村山のほととぎす峯つづき鳴く声を聞くかな
前中納言匡房
ともしする宮城が原の下露に信夫もぢずりかわく夜ぞなき
修理大夫六条顕季
五月やみ狭山が峯にともす火は雲の絶え間の星かとぞ見る