和歌と俳句

鈴鹿野風呂

1 2 3 4 5 6 7 8 9

蜑の家は南瓜這はせて巌づくり

辺つ浪のくだけに荒布拾ふなり

土用浪大砲打ちに沖の岩

鉤のんで結びし鮫の巨き口

祭川篝の火色映りそむ

高篝今まさかりの祭川

星とんで隠岐の舟路の早も秋

飛魚のきらめきとべる朝日浪

相よれる隠岐の四島や明易き

七百年のみなげき今に秋の蝉

秋風に遠島百首繙くも

湾をなす島山ひきし盆の月

島民の踊る三夜を月皎し

旅の枕にひゞき来る

放牧の牛馬に馴れての秋

ふなばたを半ばのり出て鮑突く

花葛や馬柵をぬけゆく詣で道

灼くる日に大鉄骨は翼なす

スタンドはあつしヨット目路の果

夏雲に焼岳の噴煙それかとも

畳這ふ深山の霧に地図案ず

飛騨越や稗の垂穂の霧雫

花蕎麦や提灯しかと平湯越

霧ぬれの飛騨山坂の蕎麦の花

虎杖の花に鏡山肌かくあらは

峠越すバスにつけたる岩魚籠

木曽下り一つ難所の大白雨

九鬼鰤場尾鷲鰤場と見はるかす

鰤敷に八重の高浪たゝみ来る

鰤敷や波にやゝ立ち浮丸太

浮丸太鰤大敷の形なす

八潮路のさはの鰤場や熊野灘

山々の眠れる下の牟婁鰤場

牟婁の海の夕映波に照蜜柑

春潮の滝なす中を渦移り

渦潮を観る間もすでに流さるゝ

お遍路やひた下りゆく裏屋島

遍路婆八十三の赤ゆもじ

大師千百年忌なる遍路衆

貞応の鐘ついて見よ春の昼

京を出ていく日の旅初ざくら

初花のなつかしければ結び紙

旅にして初花にあふうれしさよ

大空は紺青に枇杷鈴をなす

鶯の高嶺曇りになきつゞけ

ほつほつろまこと白妙山ざくら

浜木綿の香の大島に上陸す

浜木綿や便乗たのむ海女の舟