かりそめのビヤホールなり灯取虫
梶の葉やあはれに若き後の妻
馴れ染めて二どめの星を祭りけり
星祭おのが色香を惜みけり
大文字や漆のごとき闇の空
暈召して月おとなしや草の市
湯もどりの妻に逢ひけり草の市
白き手に選る種々や草の市
燈籠に寄せて明るき目鼻かな
燈籠を見る児いみじくゑまひけり
井浚への砂浄らかに盛られけり
高音吹いて麦笛青し美少年
馬鈴薯の花もうれしき帰省かな
帰省子を迎へて母や落着かぬ
帰省子やねびまさりたる話振
帰省すや母栽培の茄子の味
帰省子病んでいよいよやさし父と母
水浅黄ほのかにひらく日傘かな
砂山に日傘畳んで遊びけり
快晴や阜上家あり幟四五
はためけば幟いよいよ勇しき
しみじみと汗にぬれたるほくろかな
汗の妻化粧くづれも親しけれ
たわやめや笑みかたまけし鼻に汗
うす汗や行李をくくる力業