和歌と俳句

日野草城

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かりそめのビヤホールなり灯取虫

梶の葉やあはれに若き後の妻

馴れ染めて二どめの星を祭りけり

星祭おのが色香を惜みけり

大文字や漆のごとき闇の空

暈召して月おとなしや草の市

湯もどりの妻に逢ひけり草の市

白き手に選る種々や草の市

燈籠に寄せて明るき目鼻かな

燈籠を見る児いみじくゑまひけり

井浚への砂浄らかに盛られけり

高音吹いて麦笛青し美少年

馬鈴薯の花もうれしき帰省かな

帰省子を迎へて母や落着かぬ

帰省子やねびまさりたる話振

帰省すや母栽培の茄子の味

帰省子病んでいよいよやさし父と母

水浅黄ほのかにひらく日傘かな

砂山に日傘畳んで遊びけり

快晴や阜上家あり四五

はためけばいよいよ勇しき

しみじみとにぬれたるほくろかな

の妻化粧くづれも親しけれ

たわやめや笑みかたまけし鼻に

うす汗や行李をくくる力業