浅間猛る日々を黄ばめり山の麦
河鹿啼く水打つて風消えにけり
うぶすなの昔の榎茂れども
よしきりの現れて啼く草嵐
網に入るあをさばかりや梅雨曇り
白凪に鼻の日焼の見られけり
杉の鵜が竹の鵜を呼ぶ日暮かな
植ゑ上げて夕べ田原のしんとしぬ
青し国原梅雨雲のひらかむとして
よし雀お祭船へ啼きかはし
島影の常世に眠り照りかすむ
燈籠のわかれては寄る消えつつも
草蝉のあはれは硫気草あふつ
沖は白浪島蝉声を絶ちにけり
豌豆摘み下田通ひの船に佇つ
山蛙常磐木落葉時しらず
はじいてもまた来る蟻に汗しけり
雷近く林相翳を深うしぬ
山宿の壁に紛らふ蛾なりけり
山雷や毛野の青野に人も見えず
天ゆ落つ華厳日輪かざしけり
睡蓮の花沈み今日のこと終へず
帰還兵病めり熟れゐる山の麦
飼屋妻郭公啼いてねむげなる
ほととぎす山の節会の燈も稀に