藻の花に水死の夢を想ひけり
夏雲の伸びて暮れ来ぬ牡蠣筏
春蝉やはるかなりける椎の空
蝉や時雨れむ高津乙女が衣濯ぐ
濁流に花かざしゐるよ月見草
花氷やせて西日の深かりぬ
放つ蛾のきららが指紋見せにけり
山椒魚に真清水今も湧き流れ
浅間見えねばひたに聞き澄む遠郭公
妻病めば目の覚めがちに蚊の声す
花桐の香や嬌声の路阻む
西へ西へ吹かれ峯雲の聳ち消ゆる
梅雨荒れの浪に吹かれて浜鶺鴒
海いよよさわだち梅雨の雷近し
梅雨気だち薪の渋ると妻が言ふ
中だるみせし梅雨のわが七変化
日天やくらくらすなる大向日葵
水涼し毬藻に鱒のひらめきて
山蝉や雄阿寒雲を呼んで聳つ
山蝉の声澄み徹り散る葉あり
涼しさは葛飾乙女真菰刈る
大原女はすつすつとゆく青嵐