傍に寄りし仔馬やほとゝぎす
重なりて蛍の水を覗きけり
絹練つて蛍の中を舁き来る
でゝ虫にずるずるぬけし腐草かな
百日紅燃えよ水泳日本に
開きたる牡丹幹をゆるがしゐぬ
水待つて廻る水車よ夏薊
睡蓮に旅の朝夕さだめけり
馬の背に上れば見えし花菖蒲
青柚を探せば月の走りゐる
桜桃を五つ房もつて寝る子かな
漬瓜や砂の上なる一と莚
夕焼の雪ある嶺を尊みぬ
夏霞オホツク海と云ふあたり
水中花津軽の海をおだやかに
虎杖のバリバリ燃ゆる夏野かな
石炭を隠し茂りぬ夏の山
竹青く磨ける夏至の流れかな
水を打つ三社祭のほほづきや
熊彫の一つ端午を熾んにす
秋草の扇をもちぬ川開
想ひけり水芸太夫水中花
千鳥なく土用芝居の海の景
鯖鮓に歌舞伎うちわを貰ひけり