枕べのさかづきなめるいとどかな
こどもらは上野つきしか虫すだく
つゆくさのしをれて久し虫の籠
山みちをゆきつ戻りつあきつかな
こほろぎや路銀にかへる小短冊
きりぎりす夜明くる雨戸明りかな
夜のあかりとどかぬ畝やきりぎりす
きりぎりす隣の臼のやみにけり
明けかかる高窓ひくやきりぎりす
雨傘のこぼるる垣のむかごかな
柴栗の柴もみいでて栗もなし
栗のつや落ちしばかりの光なる
いが栗のつや吐く枝や筧口
うちつれて南瓜あそべり秋の縁
縞ふかく朱冴えかへる南瓜かな
鬼灯やいくつ色づく蝉のから
みづひきのたたみのつやにうつりけり
小烏に野菊もすこし縁の端
白菊や茸もある店の灯のもとに
秋の日や柑子いろづく土の塀
田から田の段々水を落しけり
隣間にいとどを捨つる夜半の秋
馬も仔はつながでゆくよ秋のくれ
秋ふかき時計きざめり草の家
草古りてぼろ着てねまるばつたかな