和歌と俳句

水原秋櫻子

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枯木星またたきいでし又一つ

葉の面に凍れる雪や花八ツ手

我影のうらうら濃さよ枯葎

枯蓮や水垢見れば流れゐる

宿直に紅茶の湯気やすがれ菊

雪の戸の堅きを押しぬクリスマス

枯萱に峠の鷹の沈みけり

わだなかや鵜の鳥群るる島二つ

天霧らひ雄峰は立てり望の夜を

泉湧く女峰の萱の小春かな

国原や野火の走り火よもすがら

恋ふらくは沙羅双樹咲く國の春

眉月とひかれる像機の上

白蓮やその瑞茎を巻きかへし

織りいでし浄土や春の夢ならぬ

や当麻の塔のふたつながら

春惜しむおんすがたこそとこしなへ

うつし世に浄土の椿咲くすがた

春日野の藤を華鬘となしたまふ

人が焼く天の山火を奪ふもの

おぼろ夜の潮騒つくるものぞこれ

行春やほのぼののこる浄土の図

行春やただ照り給ふ厨子の中

弥陀の前くちなはを搏つ童あり

供華の菊手折り捨てゆく童あり

焚火の輪百舌鳥を提げたる童あり