和歌と俳句

杉田久女

右左に子をはさみ寝る布団かな

風邪の子や眉にのび来しひたひ髪

瞳うるみて朱唇つややか風邪に臥す

熊の子の如く着せたる風邪かな

笑み解けて寒紅つきし前歯かな

寝がての蕎麦湯かくなる庵主かな

瑠璃の海全く暮れし暖炉かな

空似とは知れどなつかし頭巾人

雪道や降誕祭の窓明かり

柚子湯出て身伸ばし歩む夜道かな

緋鹿子にあご埋めよむ炬燵かな

眉根よせて文巻き返す火鉢かな

狐火や風雨の芒はしりゐる

我作る菜に死にてあり冬の蜂

掃きよする土に冬蜂這ひゐたり

牡蠣舟に上げ潮暗く流れけり

けふの糧に幸足る汝や寒雀

枯草に粉雪ささやけば胼の吾れ

枯枝に残月冴ゆる炊ぎかな

寒独活に松葉葉掃き寄せ囲ふなり

思ひつつ草のかがめば寒苺

木苺の寒を実れり摘みこぼす