右左に子をはさみ寝る布団かな
風邪の子や眉にのび来しひたひ髪
瞳うるみて朱唇つややか風邪に臥す
熊の子の如く着せたる風邪かな
笑み解けて寒紅つきし前歯かな
寝がての蕎麦湯かくなる庵主かな
瑠璃の海全く暮れし暖炉かな
空似とは知れどなつかし頭巾人
雪道や降誕祭の窓明かり
柚子湯出て身伸ばし歩む夜道かな
緋鹿子にあご埋めよむ炬燵かな
眉根よせて文巻き返す火鉢かな
狐火や風雨の芒はしりゐる
我作る菜に死にてあり冬の蜂
掃きよする土に冬蜂這ひゐたり
牡蠣舟に上げ潮暗く流れけり
けふの糧に幸足る汝や寒雀
枯草に粉雪ささやけば胼の吾れ
枯枝に残月冴ゆる炊ぎかな
寒独活に松葉葉掃き寄せ囲ふなり
思ひつつ草のかがめば寒苺
木苺の寒を実れり摘みこぼす