和歌と俳句

松浦

作者未詳
松浦川川の瀬光り鮎釣ると立たせる妹が裳の裾濡れぬ

作者未詳
松浦なる玉島川に鮎釣ると立たせる子らが家道知らずも

作者未詳
遠つ人松浦の川に若鮎釣る妹が手本を我れこそまかめ

作者未詳
若鮎釣る松浦の川の川なみの並にし思はば我れ恋ひめやも

作者未詳
春されば我家の里の川門には鮎子さ走る君待ちがてに

作者未詳
松浦川七瀬の淀は淀むとも我れは淀まず君をし待たむ

旅人
松浦川川の瀬早み紅の裳の裾濡れて鮎か釣るらむ

旅人
人皆の見らむ松浦の玉島を見ずてや我れは恋じつつ居らむ

旅人
松浦川玉島の浦に若鮎釣る妹らを見らむ人の羨しさ

君を待つ松浦の浦の娘子らは常世の国の海人娘子かも

憶良
松浦県佐用姫の子が領巾振りし山の名のみや聞きつつ居らむ

憶良
足姫神の命の魚釣らすとみ立たしせりし石を誰れ見き

憶良
百日しも行かぬ松浦道今日行きて明日は来なむを何か障れる

遠つ人松浦佐用姫夫恋ひに領巾振りしより負へる山の名

山の名と言ひ継げとかも佐用姫がこの山の上に領巾を振りけむ

万代に語り継げとしこの岳に領巾振りけらし松浦佐用姫

海原の沖行く船を帰れとか領巾振らしけむ松浦佐用姫

行く船を振り留みかねいかばかりしくありけむ松浦佐用姫

音に聞き目にはいまだ見ず佐用姫が領巾振りきとふ君松浦山


紫式部
あひ見むと思ふ心は松浦なる鏡の神や空に見るらむ

俊成
ひれふりし昔をさへやしのぶらむまつらの浦を出づる舟人

定家
いつかさはまたは逢ふ瀬を松浦がたこの河上に家はすむとも

良経
主もなき霞の袖をよそにみて松浦の沖を出づる舟人

俊成
船路より行くとも知らば年の暮れ松浦の山に袖もふらまし

定家
命だにあらばあふせを松浦川かへらぬ浪もよどめとぞおもふ

定家
蝉のはの衣に秋を松浦潟ひれふる山の暮ぞすずしき

新勅撰集・雑歌 慈円
かすみしく まつらのおきに こぎいでて もろこしまでの はるをみるかな

茂吉
松浦河 月あかくして 人の世の かなしみさへも 隠さふべしや