和歌と俳句

田原坂

鳴きもせでぐさと刺すや田原坂 漱石

暑うして奥嶺も花の古びたる 月二郎

大綿や古道いまも越えがたき 秋櫻子

稲架解くを肥後牛待てり一の坂 秋櫻子

邊見隊守りし嶮ぞ烏瓜 秋櫻子

鋭声なる鵯去り落葉降るばかり 秋櫻子

秋蕭条弾痕樟に古りゆけり 秋櫻子

刃こぼれの一剣似たり破芭蕉 秋櫻子

月一片篠原戦死の岨の上 秋櫻子

吉次越狐の径となりて絶ゆ 秋櫻子

八代

八代や蜜柑の秋も今三日 支考

君が世や旅にしあれど笥の雑煮 一茶

不知火の見えぬ芒にうづくまり 久女

不知火に酔余の盞を擲たん 草城

球磨川


球磨川の 淺瀬をのぼる 藁船は 燭奴の如き 帆をみなあげて

茂吉
球磨川の 岸に群れゐて 遊べるは ここの狭間に 生れし子等ぞ

茂吉
みぎはには 冬草いまだ 青くして 朝の球磨川ゆ 霧たちのぼる

藤懸けて荒瀬へ真直く木馬道 汀女

釣荵球磨激流の駅舎かな 汀女

老鴬や先なる舟は瀬にかかる 上村占魚

春陰の岩吹き出づる水の銀 上村占魚

冷まじく棹たわまして球磨下り 青畝

しぐるると球磨の釣人火を焚けり 青畝

五家荘

水に蝌蚪満ち地梨咲く深山かな 汀女

山深きなぞへ安らぐ春の邑 汀女

五木村

小鮎呼ぶ日の山わろは優しけん 汀女

花茨馴れては恋ふる荒瀬かな 汀女

人吉

迢空
夕闌けて 山まさ青なり。肥後の奥 人吉の町に、燈のつらなめる