大慈寺の山門長き青田かな
五月雨や鏡曇りて恨めしき
生れ代るも物憂からましわすれ草
薫風や銀杏三抱あまりなり
茂りより二本出て来る筧哉
亭寂寞薊鬼百合なんど咲く
顔黒く鉢巻赤し泳ぐ人
裸体なる先生胡坐す水泳所
泳ぎ上り河童驚く暑かな
隣より謡ふて来たり夏の月
埒もなく禅師肥たり更衣
埋もれて若葉の中や水の音
影多き梧桐に据る床几かな
郭公茶の間へまかる通夜の人
扛げ兼て妹が手細し鮓の石
小賢しき犬吠付や更衣
七筋を心利きたる鵜匠哉
漢方や柑子花さく門構
若葉して半簾の雨に臥したる
世はいづれ棕櫚の花さへ穂に出でつ
立て懸て 蛍這ひけり草箒
若葉して縁切榎切られたる
でで虫の角ふり立てて井戸の端