月の江や波もたてずに独木舟
吹きあほつ日覆のうちの櫻島
犬とゐて春を惜める水夫かな
うるはしき入水図あり月照忌
おぼえある絵巻の顔や月照忌
椰子の月虹の暈きてありにけり
からからに枯れし芭蕉と日向ぼこ
枯芭蕉巻葉ひそめてをりにけり
破れ芭蕉抜けし鶏の如くなり
霜囲ひされし芭蕉と日向ぼこ
掃くほどのちりもなかりし御墓かな
西郷どんと眠りゐる墓掃きにけり
島人や重箱さげて墓参り
掃苔やこごみめぐりに祖の墓
屋根解くや誰が誰やら煤まみれ
美しき人の来てゐる展墓かな
千鳥釣る童等がいこへる礁かな
土の上に地図ひろげあるキヤンプかな
岩の上にロープ干しあるキヤンプかな
冬木影道に敷きゐるばかりなり