おなじ野の露にやつるる藤袴哀れはかけよかごとばかりも
たづぬるに遥けき野辺の露ならばうす紫やかごとならまし
妹背山深き道をば尋ねずてをだえの橋にふみまどひける
まどひける道をば知らず妹背山たどたどしくぞたれもふみ見し
数ならばいとひもせまし長月に命をかくるほどぞはかなき
朝日さす光を見ても玉笹の葉分の霜は消たずもあらなん
忘れなんと思ふも物の悲しきをいかさまにしていかさまにせん
心もて日かげに向かふ葵だに朝置く露をおのれやは消つ