和歌と俳句

源氏物語の中の短歌

絵合

別れ路に添へし小櫛をかごとにてはるけき中と神やいさめし

別るとてはるかに言ひしひと言もかへりて物は今ぞ悲しき

一人居て眺めしよりは海人の住むかたを書きてぞ見るべかりける

うきめ見しそのをりよりは今日はまた過ぎにし方に帰る涙か

伊勢の海の深き心をたどらずて古りにし跡と波や消つべき

雲の上に思ひのぼれる心には千尋の底もはるかにぞ見る

見るめこそうらぶれぬらめ年経にし伊勢をの海人の名をや沈めん

身こそかくしめの外なれそのかみの心のうちを忘れしもせず

しめのうちは昔にあらぬここちして神代のことも今ぞ恋しき