別れ路に添へし小櫛をかごとにてはるけき中と神やいさめし
別るとてはるかに言ひしひと言もかへりて物は今ぞ悲しき
一人居て眺めしよりは海人の住むかたを書きてぞ見るべかりける
うきめ見しそのをりよりは今日はまた過ぎにし方に帰る涙か
伊勢の海の深き心をたどらずて古りにし跡と波や消つべき
雲の上に思ひのぼれる心には千尋の底もはるかにぞ見る
見るめこそうらぶれぬらめ年経にし伊勢をの海人の名をや沈めん
身こそかくしめの外なれそのかみの心のうちを忘れしもせず
しめのうちは昔にあらぬここちして神代のことも今ぞ恋しき