雪深き深山のみちは晴れずともなほふみ通へ跡たえずして
雪間なき吉野の山をたづねても心の通ふ跡絶えめやは
末遠き二葉の松に引き分かれいつか木高きかげを見るべき
生ひ初めし根も深ければ武隈の松に小松の千代を並べん
船とむる遠方人のなくばこそ明日帰りこん夫とまち見め
行きて見て明日もさねこんなかなかに遠方人は心おくとも
入り日さす峯にたなびく薄雲は物思ふ袖に色やまがへる
君もさは哀れをかはせ人知れずわが身にしむる秋の夕風
いさりせしかげ忘られぬ篝火は身のうき船や慕ひ来にけん
浅からぬ下の思ひを知らねばやなほ篝火の影は騒げる