和歌と俳句

源氏物語の中の短歌

玉鬘

船人もたれを恋ふるや大島のうら悲しくも声の聞こゆる

来し方も行方も知らぬ沖に出でてあはれ何処に君を恋ふらん

君にしも心たがはば松浦なるかがみの神をかけて誓はん

年を経て祈る心のたがひなばかがみの神をつらしとや見ん

浮島を漕ぎ離れても行く方やいづくとまりと知らずもあるかな

行くさきも見えぬ波路に船出して風に任する身こそ浮きたれ

浮きことに胸のみ騒ぐひびきには響の灘も名のみなりけり

二もとの杉のたちどを尋ねずば布留川のべに君を見ましや

初瀬川はやくのことは知らねども今日の逢瀬に身さへ流れぬ

知らずとも尋ねて知らん三島江に生ふる三稜のすぢは絶えじな

数ならぬみくりや何のすぢなればうきにしもかく根をとどめけん

恋ひわたる身はそれながら玉鬘いかなる筋を尋ね来つらん

着て見ればうらみられけりから衣かへしやりてん袖を濡らして

かへさんと言ふにつけても片しきの夜の衣を思ひこそやれ