和歌と俳句

源氏物語の中の短歌

鈴蟲

蓮葉を同じうてなと契りおきて露の分かるる今日ぞ悲しき

隔てなく蓮の宿をちぎりても君が心やすまじとすらん

大かたの秋をば憂しと知りにしを振り捨てがたき鈴虫の声

心もて草の宿りを厭へどもなほ鈴虫の声ぞひりせぬ

雲の上をかけはなれたる住家にも物忘れせぬ秋の夜の月

月影は同じ雲井に見えながらわが宿からの秋ぞ変はれる