和歌と俳句

源氏物語の中の短歌

御法

惜しからぬこの身ながらも限りとて薪尽きなんことの悲しさ

薪こる思ひは今日を初めにてこの世に願ふ法ぞはるけき

絶えぬべき御法ながらぞ頼まるる世々にと結ぶ中の契りを

結びおく契りは絶えじおほかたの残り少なき御法なりとも

おくと見るほどぞはかなきよもすれば風に乱るる萩の上露

ややもせば消えを争ふ露の世に後れ先きだつ程へずもがな

秋風にしばし留まらぬ露の世をたれか草葉の上とのみ見ん

いにしへの秋の夕べの恋しきに今はと見えし明け暗れの夢

古への秋さへ今のここちして濡れにし袖に露ぞ置き添ふ

露けさは昔今とも思ほえずおほかた秋の世こそつらけれ

枯れはつる野べをうしとや亡き人の秋に心をとどめざりけん

昇りにし雲井ながらも返り見よわれ飽きはてぬ常ならぬ世に