世を別れ入りなん道は後るとも同じところを君も尋ねよ
うき世にはあらぬところのゆかしくて背く山路に思ひこそ入れ
憂きふしも忘れずながらくれ竹の子は捨てがたき物にぞありける
ことに出で言はぬを言ふにまさるとは人に恥ぢたる気色とぞ見る
深き夜の哀ればかりは聞きわけどことよりほかにえやは言ひける
露しげき葎の宿にいにしへの秋に変はらぬ虫の声かな
横笛の調べはことに変はらぬをむなしくなりし音こそ尽きせぬ
笛竹に吹きよる風のごとならば末の世長き音に伝へなん