和歌と俳句

源氏物語の中の短歌

朝顔

人知れず神の許しを待ちしまにここらつれなき世を過ぐすかな

なべて世の哀ればかりを問ふからに誓ひしことを神やいさめん

見し折りのつゆ忘られぬ朝顔の花の盛りは過ぎやしるらん

秋はてて霧の籬にむすぼほれあるかなきかにうつる朝顔

いつのまに蓬がもとと結ぼほれ雪ふる里と荒れし垣根ぞ

年経れどこの契りこそ忘られぬ親の親とか言ひし一こと

身を変へて後も待ち見よこの世にて親を忘るるためしありやと

つれなさを昔に懲りぬ心こそ人のつらさに添へてつらけれ

改めて何かは見えん人の上にかかりと聞きし心変はりを

氷とぢ岩間の水は行き悩み空澄む月の影ぞ流るる

かきつめて昔恋しき雪もよに哀れを添ふる鴛鳶のうきねか

とけて寝ぬ寝覚めさびしき冬の夜に結ぼほれつる夢のみじかさ

なき人を慕ふ心にまかせてもかげ見ぬみずの瀬にやまどはん