人知れず神の許しを待ちしまにここらつれなき世を過ぐすかな
なべて世の哀ればかりを問ふからに誓ひしことを神やいさめん
見し折りのつゆ忘られぬ朝顔の花の盛りは過ぎやしるらん
秋はてて霧の籬にむすぼほれあるかなきかにうつる朝顔
いつのまに蓬がもとと結ぼほれ雪ふる里と荒れし垣根ぞ
年経れどこの契りこそ忘られぬ親の親とか言ひし一こと
身を変へて後も待ち見よこの世にて親を忘るるためしありやと
つれなさを昔に懲りぬ心こそ人のつらさに添へてつらけれ
改めて何かは見えん人の上にかかりと聞きし心変はりを
氷とぢ岩間の水は行き悩み空澄む月の影ぞ流るる
かきつめて昔恋しき雪もよに哀れを添ふる鴛鳶のうきねか
とけて寝ぬ寝覚めさびしき冬の夜に結ぼほれつる夢のみじかさ
なき人を慕ふ心にまかせてもかげ見ぬみずの瀬にやまどはん