大穴道少御神作妹勢能山見吉
大汝少御神の作らしし妹背の山を見らくよしも
吾妹子見偲奥藻花開在我告与
我妹子と見つつ偲はむ沖つ藻の花咲きたらば我れに告げこそ
君為浮沼池菱採我染袖沾在哉
君がため浮沼の池の菱摘むと我が染めし袖濡れにけるかも
妹為菅實採行吾山路惑此日暮
妹がため菅の実摘みに行きし我れ山道に惑ひこの日暮らしつ
兒等手乎巻向山者常在常過往人尓往巻目八方
子らが手を巻向山は常にあれど過ぎにし人に行きまかめやも
巻向之山邊響而往水之三名沫如世人吾等者
巻向の山辺響みて行く水の水沫のほとし世の人我れは
遠有而雲居尓所見妹家尓早将至歩黒駒
遠くありて雲居に見ゆる妹が家に早く至らむ歩め黒駒
今造斑衣服面影吾尓所念未服友
今作る斑の衣面影に我れに思ほゆいまだ着ねども
紅衣染雖欲著丹穂哉人可知
紅の衣染めまく欲しけども着てのほはばか人の知るべき
于各人雖云織次我廿物白麻衣
かにかくに人は言ふとも織り継がむ我が機物の白き麻衣
安治村十依海船浮白玉採人所知勿
あぢ群のとをよる海に舟浮けて白玉採ると人に知らゆな
遠近磯中在白玉人不知見依鴨
をちこちの磯の中にある白玉を人に知らえず見む縁もがも
海神手纏持在玉故石浦廻潜為鴨
海神の手に巻き持てる玉故に磯の浦廻に潜きするかも