和歌と俳句

後拾遺和歌集


けふとくる氷にかへて結ぶらし千歳の春にあはむちぎりを

兼盛
朽ちもせぬ長柄の橋のはし柱ひさしきことの見えもするかな

兼盛
武蔵野を霧の晴れ間に見渡せば行く末とほき心地こそすれ

源兼澄
霞さへたなびく野辺の松なれば空にぞ君が千代しらるる

前律師慶暹
君をいのる年の久しくなりぬれば老いの坂ゆく杖ぞうれしき

兼盛
春秋もしらで年ふる我が身かな松と鶴との年をかぞへて

源兼澄
ひともとの松のしるしぞたのもしきふた心なき千世とみつれば

よみ人しらず
君が代をなににたとへむときはなる松の緑も千代をこそふれ

紫式部
めづらしき光さしそふさかづきはもちながらこそ千世もめぐらめ

前大納言公任
いとけなき衣の袖はせばくとも劫のいしをばなでつくしてむ

よみ人しらず
君が代はかぎりもあらじ浜椿ふたたび色はあらたまるとも

右大臣顕房
これもまた千代のけしきのしるきかな生ひそふ松の双葉ながらに

元輔
ひめこまつ大原山のたねなればちとせはここにまかせてをみむ

赤染衛門
雲の上に昇らむまでもみてしがな鶴の毛ごろも年ふとならば

赤染衛門
千代をいのる心のうちのすずしきはたえせぬ家の風にぞありける

右大臣顕房
ちとせふる双葉の松にかけてこそ藤のわかえもはるひ栄えめ

花山院御製
おもふこといまはなきかな撫子の花さくばかりなりぬとおもへば

伊勢大輔
君みればちりもくもらでよろづ代のよはひをのみもます鏡かな

返し 閑院贈太政大臣能信
くもりなき鏡の光ますますも照さむ影にかくれざらめや

藤三位
おもひやれまだ鶴のこのおひさきを千世もとなづる袖のせばさを