是則
ふか緑ときはの松の影にゐてうつろふ花をよそにこそ見れ
藤原雅正
花の色は散らぬまばかりふるさとにつねには松の緑なりけり
貫之
ふる雪はかつもけななむ梅の花ちるにまどはず折りてかざさん
兼輔
春ごとに咲きまさるべき花なれば今年をもまたあかずとぞ見る
藤原扶幹朝臣
うゑし時花見むとしもおもはぬに咲き散る見ればよはひ老いにけり
藤原伊衡朝臣
竹ちかくよとこねはせし鴬のなく声きけばあさいせられず
よみ人しらず
桜花色はひとしき枝なれどかたみに見ればなぐさまなくに
返し 伊勢
見ぬ人のかたみがてらは折らざりき身になずらへる花にしあらねば
よみ人しらず
吹く風をならしの山の桜花のどけくぞ見る散らじとおもへば
よみ人しらず
桜花にほふともなく春くればなどかなげきのしげりのみする
河原左大臣源融
けふ桜しづくにわが身いさぬれむかこめにさそふ風のこぬまに
菅原右大臣
さくら花ぬしをわすれぬ物ならば吹きこむ風に事つてはせよ
躬恒
あひおもはでうつろふ色を見るものを花にしられぬながめするかな
よみ人しらず
帰る雁雲路にまどふ声すなり霞ふきとけこのめはる風