よみ人しらず
春立ちてわが身ふりぬるながめには人の心の花もちりけり
よみ人しらず
わがせこに見せむと思ひし梅の花それとも見えず雪のふれれば
よみ人しらず
きて見べき人もあらじなわがやどの梅のはつ花をりつくしてむ
よみ人しらず
ことならば折りつくしてむ梅の花わがまつ人のきても見なくに
よみ人しらず
吹く風にちらすもあらなんむめの花わが狩衣ひとよやどさむ
よみ人しらず
わがやどの梅のはつ花ひるは雪よるは月とも見えまがふかな
よみ人しらず
梅の花よそながら見むわぎもこがとかむばかりの香にもこそしめ
素性法師
梅の花をればこぼれぬわが袖に匂ひ香うつせ家づとにせん
よみ人しらず
心もてをるかはあやな梅の花かをとめてだにとふ人のなき
よみ人しらず
人心うさこそまされ春立てばとまらずきゆるゆきかくれなん
よみ人しらず
梅の花かをふきかくる春風に心をそめば人やとがめむ
よみ人しらず
春雨のふらはの山にまじりなん梅の花かさありといふなり
よみ人しらず
かきくらし雪はふりつつしかすがにわが家のそのに鴬ぞなく
よみ人しらず
谷さむみいまだ巣立たぬ鴬のなくこゑわかみ人のすさめぬ
よみ人しらず
鴬のなきつるこゑにさそはれて花のもとにぞ我はきにける
よみ人しらず
花だにもまださかなくに鴬のなくひとこゑを春とおもはむ
よみ人しらず
君がため山田のさはにゑくつむと濡れにし袖は今もかわかず
朱雀院の兵部卿のみこ
梅の花今はさかりになりぬらんたのめし人のおとづれもせぬ
返し 紀長谷雄朝臣
春雨にいかにぞ梅やにほふらんわが見る枝は色もかはらず
よみ人しらず
梅の花ちるてふなへに春雨のふりてつつなく鶯のこゑ