藤原敏行朝臣
ふる雪のみのしろ衣うちきつつ春きにけりとおどかれぬる
凡河内躬恒
春立つとききつるからにかすが山消えあへぬ雪の花とみゆらむ
兼盛
けふよりは荻のやけ原かきわけて若菜つみにと誰をさそはん
よみ人しらず
白雲のうへしるけふぞ春雨のふるにかひある身とはしりぬる
左大臣実頼
松もひき若菜もつまず成りぬるをいつしか桜はやもさかなむ
朱雀院御返し
まつにくる人しなければ春の野のわかなも何もかひなかりけり
よみ人しらず
君のみや野辺に小松を引きにゆく我もかたみにつまんわかなを
よみ人しらず
霞立つ春日の野辺の若菜にもなりみてしがな人もつむやと
みつね
春の野に心をだにもやらぬ身はわかなはつまで年をこそつめ
行明親王
ふるさとの野辺見にゆくといふめるをいざもろともに若菜つみてん
よみ人しらず
吹く風や春たちきぬと告げつらん枝にこもれる花さきにけり
兼覧王女
もえいづる木の芽を見てもねをぞなく枯れにし枝の春をしらねば
よみ人しらず
いつのまに霞立つらん春日野の雪だにとけぬ冬とみしまに
閑院左大臣
なほざりに折りつるものを梅の花こきかに我や衣そめてむ
藤原兼輔朝臣
宿ちかく移してうゑしかひもなくまちとほにのみにほふ花かな