和歌と俳句

後拾遺和歌集

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能因法師
氷とも人の心を思はばやけふ立つ春の風ぞとくやと

祭主輔親
みつしほのひるまだになき浦なれやかよふ千鳥の跡もみえぬは

道命法師
しほたるるわが身のかたはつれなくてこと浦にこそ煙たつなれ

道命法師
おもひわび昨日やまべに入りしかどふみみぬ道はゆかれざりけり

前大納言公任
雲井にて契りし中はたなばたをうらやむばかりなりにけるかな

藤原隆資
あふことのいつとなきには織女の別るるさへぞうらやまれける

馬内侍
逢ふことのとどこほるまはいかばかり身にさへしみて歎くとかしる

藤原顕季朝臣
鴫のふす刈田にたてる稲茎の否とは人のいはずもあらなん

白河院御製
あふさかの名をも頼まじ恋すればせきの清水に袖もぬれけり

道命法師
逢ふことはさもこそ人めかたからめ心ばかりはとけてみえなん

返し よみ人しらず
思ふらんしるしだになき下紐に心ばかりのなにかとくべき

和泉式部
下きゆる雪間の草のめづらしく我が思ふ人に逢ひ見てしがな

源頼綱朝臣
奥山のまきの葉しろく降る雪のいつとくべしとみえぬ君かな

源政成朝臣
うれしきを忘るる人もあるものを辛きをこふる我や何なる

平兼盛
恋ひそめし心をのみぞ恨みつる人のつらさをわれになしつつ

藤原為時
いかにせんかけても今はたのまじと思ふにいとどぬるる袂を

相模
あふことのなきよりかねてつらければさてもあらましぬるる袖かな

大中臣能宣朝臣
まてといひし秋もなかばになりぬるを頼めかおきし露はいかにぞ

堀河右大臣頼宗
逢ふまでとせめて命の惜しければ恋こそ人の命なりけれ

相模
つきもせず恋に涙をながすかなこやななくりの出湯なるらん