宜秋門院丹後
ふゆの夜は あまぎるゆきに そらさえて くものなみぢに こほる月かげ
二條院讃岐
うちはへて ふゆはさばかり ながき夜に 猶のこりける ありあけの月
皇太后宮大夫俊成
月きよみ ちどりなくなり おきつかぜ ふけひの浦の あけがたのそら
權中納言国信
友千鳥 むれてなぎさに わたるなり おきのしらすに しほやみつらん
源顕国朝臣
かぜふけば なにはのうらの はま千鳥 あしまになみの たちゐこそなけ
源具親朝臣
小夜ちどり みなとふきこす しほかぜに うらよりほかの ともさそふなり
鎌倉右大臣実朝
かぜさむみ 夜のふけゆけば いもがしま かたみのうらに ちどりなくなり
前関白道家
年さむき まつのこころも あらはれて はなさくいろを 見するゆきかな
内大臣実氏
あらはれて としあるみ世の しるしにや のにもやまにも つもるしらゆき
權中納言長方
しきしまや ふるのみやまは うづもれて ならしのをかに みゆきつもれり
權中納言長方
宮木引 そまやまびとは あともなし ひばらすぎはら ゆきふかくして
正三位家隆
たかしまや みをのそまやま あとたえて こほりもゆきも ふかきふゆかな
賀茂重政
まきもくの ひばらのやまも ゆきとぢて まさきのかづら くる人もなし
西行法師
おほはらは ひらのたかねの ちかければ ゆきふるほどを おもひこそやれ
刑部卿範兼
たまつばき みどりのいろも 見えぬまで こせのふゆ野は ゆきふりにけり
清輔朝臣
雲井より ちりくるゆきは ひさかたの 月のかつらの はなにやあるらん
前関白道家
いるひとの おとづれもせぬ しらゆきの ふかきやまぢを いづる月かげ
関白左大臣教実
をとめごの そでふるゆきの 白妙に よしののみやは さえぬひもなし
左京大夫顕輔
ゆきふかき よしののやまの たかねより そらさへさえて いづる月かげ
後京極摂政前太政大臣良経
さびしきは いつもながらの ものなれど くもまのみねの ゆきのあけぼの
後京極摂政前太政大臣良経
しもとゆふ かづらきやまの いかならん みやこもゆきは まなく時なし