源師賢朝臣
そでぬらす しぐれなりけり 神無月 いこまのやまに かかるむら雲
右衛門督為家
ふゆきては しぐるる雲の たえまだに よものこのはの ふらぬひぞなき
正三位知家
しぐれには ぬれぬこのはも なかりけり やまはみかさの 名のみふりつつ
源兼昌
ゆふづくひ いるさのやまの たかねより はるかにめぐる はつしぐれかな
藤原公重朝臣
やまのはに いりひのかげは さしながら ふもとのさとは しぐれてぞゆく
平経正朝臣
むら雲の とやまのみねに かかるかと 見ればしぐるる しがらきのさと
前内大臣通光
神なづき しぐれにけりな あらちやま ゆきかふそでも いろかはるまで
前大僧正慈円
みやま木の のこりはてたる こずゑより なほしぐるるは あらしなりけり
前大僧正慈円
月をおもふ あきのなごりの ゆふぐれに こかげふきはらふ 山おろしのかぜ
前大納言忠良
あきのいろは のこらぬやまの こがらしに 月のかつらの かげぞすれなき
殷富門院大輔
そらさむみ こぼれておつる しらたまの ゆらぐほどなき しもがれの庭
正三位家隆
ふるさとの にはのひかげも さえくれて きりのおちばに あられふるなり
正三位家隆
ゆふづくひ さすがにうつる しばのとに あられふきまく 山おろしのかぜ
兵部卿成実
さゆる夜は ふるやあられの たまくしげ みむろのやまの あけがたのそら
前関白道家
いはたたく たぎつかはなみ おとさえて たにのこころや 夜ざむなるらん
式子内親王
ふきむすぶ たきは氷に とぢはてて まつにぞかぜの こゑもをしまぬ
式子内親王
おちたぎつ いはきりこえし 谷水も ふゆはよなよな ゆきなやむなり
中宮但馬
ねやさむき ねくられがみの ながき夜に なみだのこほり むすぼほれつつ
西行法師
かぜさえて よすればやがて こほりつつ かへるなみなき しがのからさき
内大臣実氏
しがの浦や こほりのひまを ゆくふねに なみもみちある よとやみるらん