我が身をば浮かべる雲になせればぞつくかたもなくはかなかりける
幻の身とし知りぬる心にははかなき夢とおもほゆるかな
かりのめにしばしうかべるたましひの水の泡ともたとへられつつ
黒髪のにはかに白くなりぬれば春の花とぞ見えわたりける
わかきみも春の光にひとしくば草木なる身も知りぬべらなる
夢にてもうれしきことのみえつるはただにうれふる身にはまされり
雲わけてみやこたづねにゆく雁も春にあひてぞとびかへりける
春のみや花は咲くとも谷さむみうもるる草は光をも見ず
はるはるにあひてもあはぬ我が身かなはなゆきにのみふりまさりつつ
しらなみのたちかへりくる数よりも我が身を嘆くことはまされり
古今集・雑歌
あしたづのひとりおくれてなく声は雲の上まできこえつかなむ
雨雲や身を隠すらむ日の光あかず照らせど見るよしもなし
年ごとにはるあきとのみかぞへつつ身はひとときにあふよしもなし
おもふこと鳴く鶯とつてたらば色もかはらぬわれひとりといへ
みやこまでなみたちくともきかなくにしばしだになど身にしづむらむ
ほととぎすさつきまたずてなきにけりはかなく春を過し来ぬれば