和歌と俳句

後撰和歌集

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

よみ人しらず
にはかにも風のすずしくなりぬるか秋立つ日とはむべもいひけり

よみ人しらず
打ちつけに物ぞ悲しきこのはちる秋のはじめをけふぞとおもへば

よみ人しらず
たのめこし君はつれなし秋風はけふよりふきぬわが身かなしも

よみ人しらず
いとどしく物思ふやどの荻の葉に秋と告げつる風のわびしさ

よみ人しらず
秋風のうちふきそむる夕暮れはそらに心ぞわびしかりける

大江千里
露わけし袂ほすまもなきものをなど秋風のまだきふくらん

よみ人しらず
秋萩を色とる風の吹きぬれば人の心もうたがはれけり

業平
秋萩を色とる風は吹きぬとも心は枯れじ草葉ならねば

閑院
あふことはたなばたつめにひとしくてたちぬふわざはあへずぞありける

よみ人しらず
天の河渡らむそらもおもほえずたえぬ別と思ふものから

源中正
雨ふりて水まさりけり天の河こよひはよそにこひむとやみし

よみ人しらず
水まさり浅き瀬知らずなりぬとも天のと渡る舟もなしやは

藤原兼三
たなはたも逢ふよありけり天の河この渡にはわたるせもなし

よみ人しらず
彦星のまれにあふよのとこ夏は打ちはらへども露けかりけり

よみ人しらず
こひこひてあはむと思ふ夕暮れはたなばたつめもかくぞあるらし

よみ人しらず
たぐひなき物とは我ぞなりぬべきたなはたつめは人めやはもる

よみ人しらず
天の河流れてこひはうくもぞあるあはれと思ふせにはやく見む

よみ人しらず
玉蔓たえぬものからあらたまの年の渡はただひとよのみ

よみ人しらず
秋の夜の心もしるくたなはたのあへるこよひはあけずもあらなむ

よみ人しらず
契りけん言の葉今は返してむ年のわたりによりぬるものを