よみ人しらず
けふよりは夏の衣になりぬれど着る人さへはかはらざりけり
よみ人しらず
卯の花の咲ける垣根の月きよみい寝ずきけとやなくほととぎす
よみ人しらず
ほととぎすきゐる垣根はちかながらまちどほにのみ声のきこえぬ
よみ人しらず
ほととぎす声まつほどはとほからでしのびになくをきかぬなるらむ
よみ人しらず
うらめしき君が垣根の卯の花は憂しと見つつも猶たのむかな
よみ人しらず
憂きものと思ひしりなば卯の花の咲ける垣根もたづねざらまし
よみ人しらず
時わかず降れる雪かと見るまでに垣根もたわに咲ける卯の花
よみ人しらず
白妙ににほふ垣根の卯の花のうくもきてとふ人のなきかな
よみ人しらず
時わかず月か雪かと見るまでに垣根のままに咲ける卯の花
よみ人しらず
なきわびぬいづちかゆかむ郭公なほ卯の花のかげははなれじ
よみ人しらず
あひみしもまたみぬこひも郭公月になくよぞよににざりける
よみ人しらず
ありとのみ音羽の山の郭公ききにきこえてあはずもあるかな
良岑義方朝臣
いひそめし昔のやどの杜若色ばかりこそかたみなりけれ
よみ人しらず
ゆきかへるやそうじ人の玉かづらかけてぞ頼む葵てふ名を
よみ人しらず
ゆふだすきかけてもいふなあだ人の葵てふ名は禊にぞせし
よみ人しらず
このごろは五月雨ちかみ郭公思ひみだれてなかぬ日ぞなき
よみ人しらず
待つ人は誰ならなくにほととぎす思ひのほかに鳴かば憂からむ
よみ人しらず
にほひつつ散りにし花ぞおもほゆる夏は緑の葉のみしげれば
大春日師範
五月雨に春の宮人くるときは郭公をやうぐひすにせむ