藤原伊衡朝臣
よろづよの霜にもかれぬ白菊をうしろやすくもかざしつるかな
典侍あきらけい子
雲わくる天の羽衣うちきては君がちとせにあはざらめやは
太政大臣忠平
今年より若菜にそへて老のよにうれしきことをつまむとぞおもふ
つらゆき
ことのねも竹もちとせの声するは人のおもひにかよふなりけり
よみ人しらず
ももとせと祝ふをわれは聞きながら思ふかためはあかずぞありけり
つらゆき
大原やをしほの山の小松原はやこだかかれちよのかげみむ
よみ人しらず
うちよするなみのはなこそさきにけれちよまつ風や春になるらむ
君がため松のちとせもつきぬべしこれよりまさむ神のよもがな
ゆいせい法師
ももとせにやそとせそへて祈りくる玉のしるしを君みざらめや
僧都仁教
けふそくをおさへてまさへよろづよに花のさかりを心しづかに
太政大臣忠平
君がため祝ふ心の深ければひじりのみよのあとならへとぞ
村上院御製
をしへおくことたがはずば行末の道とほくともあとは惑はじ
太政大臣忠平
山人のこれるたきぎは君がため多くの年をつまむとぞ思ふ
村上院御製
年の数つまむとすなるおもににはいとどこつけをこりもそへなむ
きよただ
君がため移して植うるくれ竹にちよもこもれるここちこそすれ
命婦いさぎよき子
をののえのくちむもしらず君が世の尽きむ限りはうちこころみよ
右大臣師輔
なみだてる松の緑の枝わかず折りつつちよを誰とかは見む
つらゆき
祝ふこと有りとなるべし今日なれど年のこなたに春もきにけり
左大臣実頼
まだ知らぬ人もありけり東路に我も行きてぞ住むべかりける