藤原敦忠
逢ふ事のこよひ過ぎなばたなばたにおとりやしなんこひはまさりて
よみ人しらず
たなばたのあまのとわたる今宵さへをち方人のつれなかるらむ
よみ人しらず
天の河とほき渡はなけれども君がふなでは年にこそまて
よみ人しらず
あまの河いはこす浪のたちゐつつ秋のなぬかのけふをしぞまつ
紀友則
けふよりはあまの河原はあせななんそこひともなくただわたりなん
よみ人しらず
天の河流れてこふるたなはたの涙なるらし秋のしらつゆ
よみ人しらず
あまの河せせの白浪たかけれどただわたりきぬまつにくるしみ
よみ人しらず
秋くれば河霧わたる天の河かはかみ見つつこふる日のおほき
よみ人しらず
天の河こひしきせにぞ渡りぬるたぎつ涙に袖はぬれつつ
よみ人しらず
たなばたの年とはいはじ天の河雲たちわたりいさみだれなん
躬恒
秋の夜のあかぬ別をたなばたはたてぬきにこそ思ふべらなれ
兼輔朝臣
たなばたの帰るあしたの天の河舟もかよはぬ浪もたたなん
貫之
あさとあけてながめやすらんたなばたはあかぬ別のそらをこひつつ
よみ人しらず
秋風の吹けばさすがにわびしきは世のことわりと思ふものから
よみ人しらず
松虫のはつこゑさそふ秋風はおとは山よりふきそめにけり
業平朝臣
ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは秋風ふくと雁につげこせ
よみ人しらず
秋風の草葉そよぎてふくなべにほのかにしつるひぐらしのこゑ
貫之
ひぐらしの声きく山のちかけれやなきつるなへにいり日さすらん
貫之
ひぐらしのこゑきくからに松虫の名にのみ人を思ふころかな
貫之
心ありてなきもしつるかひぐらしのいづれももののあきてうければ