大江千里
やどりせし花橘も枯れなくに など郭公こゑたえぬらん
紀貫之
夏の夜の 臥すかとすれば 郭公鳴く一こゑにあくるしののめ
壬生忠岑
暮るるかとみればあけぬる夏の夜を あかずとやなく 山郭公
紀秋岑
夏山に恋しき人やいりにけん こゑふりたててなくほととぎす
よみ人しらず
こぞの夏なきふるしてし郭公 それかあらぬか こゑのかはらぬ
躬恒
郭公こゑもきこえず 山彦は 外になく音をこたへやはせぬ
貫之
郭公人まつ山になくなれば 我うちつけに恋ひまさりけり
忠岑
むかしべや今も恋しき 時鳥 ふるさとにしも鳴きてきつらむ
躬恒
郭公 我とはなしに 卯の花のうき世の中に鳴きわたるらん
僧正遍昭
蓮葉の にごりにしまぬ心もて なにかは露をたまとあざむく
深養父
夏の夜はまだよひながら明けぬるを 雲のいづこに月やどるらん
躬恒
ちりをだにすゑじとぞ思ふ 咲きしより 妹とわが寝るとこなつの花
躬恒
夏と秋と行きかふそらの通路は かたへすずしき風やふくらん