よみ人しらず
わがやどの池の藤なみさきにけり 山郭公いつかきなかむ
紀としさだ
あはれてふことをあまたにやらじとや 春におくれてひとりさくらん
よみ人しらず
さ月まつ山郭公 うちはぶき今も鳴かなん こぞのふるごゑ
伊勢
さつきこば鳴きもふりなん 郭公 まだしき程のこゑをきかばや
よみ人しらず
さつきまつ花たちばなの香をかげば 昔の人の袖の香ぞする
よみ人しらず
いつのまにさ月きぬらん あしひきの山郭公今ぞ鳴くなる
よみ人しらず
けさ来鳴きいまだ旅なる郭公 花たちばなにやどは借らなん
素性法師
ほとゝぎす初声きけば あぢきなく ぬしさだまらぬ恋せらるはた
よみ人しらず
夏山になくほとゝぎす 心あらば 物思ふわれにこゑな聞かせそ
よみ人しらず
郭公なく声きけば 別れにしふるさとさへぞ恋しかりける
よみ人しらず
郭公 汝が鳴く里のあまたあれば なほうとまれぬ 思ふものから
よみ人しらず
思ひいづるときはの山の郭公 唐紅のふりいでてぞなく
よみ人しらず
こゑはして涙は見えぬ郭公 わが衣手のひつを借らなん
よみ人しらず
あしひきの山郭公 をりはへて 誰かまさると ねをのみぞ鳴く
よみ人しらず
いまさらに山へかへるな 郭公 こゑのかぎりは我がやどに鳴け
みくにのまち
やよや待て 山郭公 ことづてん われ世の中にすみわびぬとよ