和歌と俳句

西山泊雲

川千鳥隈なき月にとぶも見ゆ

取りかへる支柱や石蕗の花

冬木積む舟見てしめし障子哉

枯木宿行燈静かに動きけり

星見えて椎に音ある時雨かな

藪の表を又過ぎ行くや雪しまき

我が方へいぶる焚火や藪撓む

焚火高くこがるゝ藪の穂尖かな

鍬とれば焚火の酔のさめにけり

簷の櫂の膠を嘗めに寒雀

雪天のくるゝゆとりや寒雀

牡蠣船を出しが灯らず別れけり

鵯たつて地を煽れる落葉かな

冬の夜犬上り寝る米俵

藪空や北斗も見えず雪催ひ

玻璃窓にストーブの火映り園烈風

火燵深く居て軒一枝の垂れ紅葉

麦蒔や児二人遊ぶ蓑の上

麦蒔女泣く児に畝を走り来ぬ

石蕗咲くや汚れず古りし廻り縁

朝な掃く禰宜や枯木の根幾条

色をうつしてこまごま霜の落葉かな

草ひいて煙程の育てけり