高野素十
松の枝大雪塊ののり撓め
しめりたつ雪尚高し家のあひ
御社雪囲ひして雪すくな
一塊の軒の雪より長つらら
雪掻いて黄菊の花のあらはるる
雪卸す人に通りし煙かな
春近し石段下りて薺あり
雪片のつれ立ちてくる深空かな
夕霰枝にあたりて白さかな
雪折の連翹すいと長き枝
丘の上の寺の氷柱も見ゆるかな
黄楊の雪大きく割れてゐたるかな
雪山のつき出してあり鮭の海
松の枝くつつく雪の這ひ渡り
神垣や忽ち雪の振り出でし
山中湖凧のあがれる小春かな
翠黛の時雨いよいよはなやかに
冬山に吉野拾遺をなこしたる
遠千鳥ちりぢり高し多摩川原
凍雪を踏んで柊挿しにけり