和歌と俳句

松本たかし

古馬車を拾ひ得たりや初詣

古い馬車に痩馬つけて御者の春

産土神や羽子日和なる山の端に

炭竃に燃えつづく火の去年今年

輪飾を掛けし其他は総て略

在りし世の羽子板飾り隠れ栖

飾らるる羽子板も古り妹も古りぬ

夕まで初富士のある籬かな

青籬の霜ほろほろと初雀

初富士の抱擁したる小漁村

別火置き太夫在らせる能始

後後と日和まさりに三ケ日

羽子日和続き続けり続けかし

輪飾はとれて柱の掛暦

元日のうるはしかりし賀客なし

風邪の眼にかがよふ黄あり福寿草

膝もとの日の明るさや福寿草

年賀受け年賀状受け籠りをり

屑入の古魚籠存す座右の春

羽子音の一つもなしや羽子日和

枯芭蕉八柱立てり初日さす

猫と居る庭あたたかし賀客来る

音高く色明らかの羽子日和