和歌と俳句

山口誓子

凍港

神が召すいけにへ熊の胴飾り

削り木を神とかしづき熊祭

唐太の天ぞ垂れたり鰊群来

ただよへる海髪のひしめく鰊群来

送り火やよもの山扉は空に満つ

昼ながら天の闇なり菖蒲園

滝浴のまとふものなし夜の新樹

まどろすが丹の海焼けや労働祭

蜑が戸の虫干見ゆる澳辺かな

蛍火の流れ落ちゆく荒瀬見ゆ

郭公韃靼の日の没つなべに

浴衣きて生業はなれたり舸子が妻

をちかたの洗ひ障子や日に燦と

掃苔や餓鬼が手かけて吸へる桶

硬雪に焚く炭俵スキー会

雪窪に炭火焚き陥つスキー会

雪挿しに長路のスキー休めあり

白樺やのこる古雪萱の中

氷の窓に冥き海ぞも氷下魚釣る

禍つ魚氷の下闇に游ぐ見ゆ

橇行や氷下魚の穴に海溢る

鉄枴や萱の枯みち海に落つ

暖房や葭の衝立扉を隠す

住吉に凧揚げゐたる処女はも