いこま山あらしも秋の色にふく手染のいとのよるぞかなしき
しぐれ行く生田のもりのこがらしに池のみくさも色かはる頃
誰が方による鳴く雁の音にたててなみだうつろふ武蔵野の原
秋をやく色にぞ見ゆるいぶき山燃えてひさしき下のおもひも
はるかなる月のみやこにちぎりありて秋の夜あかす更科の里
白河のせきのせきもりいさむともしぐるる秋の色はとまらじ
面影は日も夕ぐれに立ちそひて野島によするあきのうらなみ
ともし火のあかしのおきの友ぶねも行く方たどる秋の夕ぐれ
立ちくもるあふくま川の霧のまに秋をばやらぬ関も据ゑなむ
音まがふこのはしぐれをこきまぜていはせに染むる清瀧の糸
朝霜をしらゆふかけて大原や小鹽の山にかみまつるころ
淡路島むかひのくものむらしぐれ染めもおよばぬ住吉の松
狩人の交野のみゆきうち拂ひとよのあかりにあはむとや思ふ
おきあかす霜ぞかさなるたび衣たみのの島はきてもかひなし
あらち山みねの木枯さきだてて雲のゆくてにおつるしらゆき
富士の嶺にめなれし雪のつもり来ておのれ時しる浮島が原
そなたより霞やしたにいそぐらむあだちの眞弓春はとなりと
きのふかも秋の田面につゆおきし因幡の山もまつの白ゆき
かがみ山うつれるなみのかげながら空さへこほる有明のつき