和歌と俳句

後拾遺和歌集

羇旅

堀川太政大臣兼通
逢坂の関とはきけどはしり井の水をばえこそとどめざりけれ

前大納言公任
ゆく道の紅葉の色も見るべきを霧とともにやいそぎたつべき

返し 中納言定頼
霧わけていそぎたちなむ紅葉ばの色にみえなば道もゆかれじ

花山院御製
たびの空よはの煙とのぼりなばあまのもしほ火たくかとやみむ

懐圓法師
みやこにてふきあげの浜を人とはばけふ見るばかりいかがかたらむ

少輔
山のはにさはるかとこそ思ひしか峯にてもなほ月ぞまたるる

藤原國行
すぎがてにおぼゆるものは蘆間かな堀江のほどは綱手ゆるめよ

能因法師
蘆の屋のこやの渡りに日は暮れぬいづちゆくらむ駒にまかせて

増基法師
みやこのみかへり見られて東路をこまの心にまかせてぞ行く

和泉式部
こととはばありのまにまに都鳥みやこのことを我にきかせよ

恵慶法師
鏡山こゆるけふしも春雨のかきくもりやはふるべかりける

赤染衛門
こえはてば都も遠くなりぬべし関の夕風しばしすずまむ

増基法師
けふばかり霞まざらなむあかで行くみやこの山はそれとだにみむ

良暹法師
わたのべや大江のきしにやどりして雲井にみゆる生駒山かな

能因法師
しらくものうへよりみゆるあしひきの山のたかねやみさかなるらむ

源重之
東路にここをうるまといふことは ゆきかふ人のあればなりけり

大江廣経朝臣
あつまぢの浜名の橋をきてみれは昔こひしきわたりなりけり

能因法師
おもふ人ありとなけれどふるさとはしかすがにこそ恋しかりけれ

能因法師
みやこをば霞とともに立ちしかど秋風ぞふく白川の関

能因法師
世の中はかくてもへけりきさがたのあまの苫屋を我が宿にして