和歌と俳句

万葉集

巻第三

挽歌

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     同石田王卒之時山前王哀傷作歌一首
角障経 石村之道乎 朝不離 将歸人乃 念乍 通計萬口波  霍公鳥 鳴五月者 菖蒲 花橘乎 玉尓貫 蘰尓将為登  九月能 四具礼能時者 黄葉乎 折挿頭跡 延葛乃 弥遠永  萬世尓 不絶等念而 念憑而 将通 君乎婆明日従 外尓可聞見牟
     右一首或云柿本朝臣人麻呂作

   同じく石田王が卒りし時に 山前王がかなしびて作る歌一首
つのさはふ いはれの道を 朝さらず ゆきけむ人の おもひつつ 通ひけまくは  ほととぎす 鳴く五月には あやめぐさ 花橘を 玉に貫き かづらにせむと  ながつきの しぐれのときは もみちばを 折りかざさむと はふ葛の いや遠長く  よろづよに 絶えじとおもひて 通ひけむ 君をば明日ゆ よそにかも見む

     或本反歌二首
隠口乃 泊瀬越女我 手二纒在 玉者乱而 有不言八方

    或本の反歌二首
こもりくの 伯瀬をとめが 手にまける 玉は乱れて ありと言はずやも

河風 寒長谷乎 歎乍 公之阿流久尓 似人母逢耶
     右二首者或云紀皇女薨後山前王代石田王作之也

かはかぜの 寒きはつせを 歎きつつ きみがあるくに 似る人も逢へや
     右の二首は 或いは紀皇女の薨ぜし後に 山前王 石田王に代りて作る と云ふ

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