初時雨しかと心にとめにけり
袖をもて拂ひもぞする初時雨
障子外通る許りや冬座敷
寒菊に憐みよりて剪りにけり
倉庫の扉打ち開きあり寒雀
各々は小諸寒しとつぶやきて
迷ひゐる雲や浅間は雪ならん
舞うてゐし庭の落葉何時かなし
あとを追ふ子を置いて行く落葉径
落葉踏みすべり尻もちつき笑ふ
物をいふ風の枯葉に顧る
蕎麦干して居てしぐるるを知らぬげに
山の名を覚えし頃は雪の来し
時雨るると娘手かざし父仰ぎ
山国の冬は来にけり牛乳をのむ
一塊の冬の朝日の山家かな
冬山路俄にぬくき所あり
冬山路浅間に向ひ或は外れ
その蔭のほのとあたたか枯づつみ
石に腰しばらくかけて冷たくて
雲少し枯木の空を過ぐるのみ
子を先に冬枯道を帰りつつ
紫苑枯れあはれ消えなん姿かな
強霜に今日来る人を心待ち
凍て衣昨日も今日も干してあり
釣瓶置く石を包める厚氷