ねぐら雀はたとなきやみ春浅き
片富士の雪解にならび入る日かな
鎌月も星も青みて余寒かな
いよよ闌けしみかんを食うて余寒かな
奥山に大雪やある余寒かな
旦夕べ綻ぶ梅にあかねかな
咲き出でて梅としりけり屋根ごしに
紅梅に照り沈む日の大いなる
鶯に雲一つなき夜明かな
三月は鳥も啼かずにくれにけり
春雷のあるごとくらみ雨となりぬ
初東風とかはりし夕べはれにけり
やよひちかく太星一つ揺曳と
西空に揺曳し星春めける
鶲見し眼に火食鳥春の雨
大いなる花の菫に夜明け来し
消つ生れつ浮く薄雲の弥生かな
群ら星のあちらこちらの弥生かな
蒼空に連れ舞ふ雲の弥生かな
嶺々幾重煙霧とまがひ杉の花
吹きあぐる黄なる煙かや杉の花
はやばやと巣雀ねむり朧かな
星もなく天地朧に見えにけり
春の星帝釈天へ還られし
冥々晦として昼の花の雨