和歌と俳句

原 石鼎

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夕空に雲茜して黯し

手紙書く墨をすりけり梅盛り

日に月に風雨のあとの梅は白し

大暴風雨のあとにも浮きて梅の花

雨音も風音も止み梅浄し

一点の雲なき空や梅は散る

碧空や散り居る梅の花に風

碧空や梅の落英見えて居る

松高く幹に夕日や梅闌けて

梅の花雪降る如く吹かれ散り

夕空のあけぼの色に梅の花

石蕗の葉のどの葉にも梅の落花かな

けふも鶯散りつくしたる梅が枝に

散り尽す梅の中なる星の数

春めくや西日に小鳥ちらちらす

爛淀の梅ばかりなる雛の日

梅が香の霞むほどなる雛まつり

啓蟄や若く盛んなる枝見ゆる

焔して燃ゆる雲あり槙新芽

芽吹きつつ靡ける如き大樹かな

養花天まばゆきまでの夕餉かな

一連の小鳥は飛びぬ養花天

春眠の覚めて闌け居る庵の梅

よき炭火して黄昏れぬ躑躅雨