夕山路いつか梅雨雲の中をゆく
梅雨の鳥塒にをりて聲おとす
梅雨の鳥鳴きし梢は雲の中
むさゝびの高尾の山に来て寝たり
むさゝびや杉にともれる梅雨の星
むさゝびの巣ごもるこゑのこの遠さ
短夜の雲欄にをり青葉木兎
黄鶲にこゝろせかれつ顔洗ふ
黄鶲や澤邊に多き薊の座
黄鶲や勤行の太鼓峰に鳴り
朝鳥に定家かづらも香をおくる
山椒喰鳴きすぎければ茜空
雉鳩や朝日をむかふ梅雨の松
やぶさめやくましで青く咲きむれて
栗鼠はしる木の間や梅雨の富士あをし
梅雨の富士晴れつゝ去らぬ雲まとふ
青啄木鳥の高鳴きくも梅雨の山
大瑠璃鳥をきくや澤蟹のよぎる径
佛法僧梅雨雲の上にいま鳴ける
佛法僧巴と翔くる杉の鉾
早苗舟利根を越ゆると艪を押しぬ
雲もれて日のさす方へ早苗舟
ひたぬれて田植をはりし舟かへる
七夕や木の間の池はすでに暮れ
尾のさはに眞菰の小馬庭に立つ