和歌と俳句

西行

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松の下は 雪降る折の 色なれや 皆白妙に 見ゆる山路に

雪積みて 木も分かず咲く 花なれや 常磐の松も 見えぬなりけり

花と見る 梢の雪に 月さえて たとへん方も なき心地する

まがふ色は 梅とのみ見て 過ぎ行くに 雪の花には 香ぞなかりける

折しもあれ うれしく雪の 埋むかな かき籠りなんと 思ふ山路を

中々に 谷の細道 埋め雪 ありとて人の 通ふべきかは

谷の庵に 玉の簾を 懸けましや すがる垂氷の 軒を閉じずは

樒おく 閼伽の折敷の 縁なくは 何にあられの 玉と散らまし

岩に堰く 閼伽井の水の わりなきに 心澄めとも 宿る月かな

あはれなり おなじ野山に 立てる木の かかる標の 契りありける

めぐり逢はん ことの契りぞ 頼もしき 厳しき山の 誓ひ見るにも

筆の山に かき登りても 見つるかな 苔の下なる 岩のけしきを

立てそむる 醤蝦採る浦の 初竿は 罪の中にも すぐれたるかな

下り立ちて 浦田に拾ふ 海人の子は つみより罪を 習ふなりけり

真鍋より 塩飽へ通ふ 商人は つみを櫂にて 渡るなりけり

おなじくは かきをぞ挿して 干しもすべき 蛤よりは 名も便りあり

栄螺棲む 瀬戸の岩壺 求め出でて いそぎし海人の けしきなるかな

岩の根に 片面向きに 並み浮きて 鮑を潜く 海人の群君